rememberのゆめにっき

現実のことも書くが

語彙増殖③

一笑に付す 心許ない 忌避 上梓 加味 済し崩し エチュード 瑕疵 お茶を濁す バーナム効果 パブリシティ かまびすしい よすが スポイル 長ずる 無頼 寵愛 後添い 目を剥く 進退窮まる 韜晦 遁辞 退嬰 寡兵 得心 駘蕩 喝破 粗忽 箸にも棒にかからない 訝る 惑乱 こまっしゃくれる 是非 薄 証左 烙印 卑賎 村八分 啖呵 従容 戦慄く 遊蕩 寂寥 泰然 リテラシー 玄妙 遣る方ない 驟雨 一瀉千里 渡りに船 詠嘆 間歇 磊塊 来し方 斎戒沐浴 捨て鉢 蓮っ葉 玄人 徒 卜占 双眸 不即不離 奇矯 聾する 鼻梁 顕著 闖入 嘆声 念慮 遣る瀬無い 意趣返し 払暁 憂悶 常套 謀略 邪慳 年嵩 露骨 未練 捲土重来 侠客 三下 鳩尾 拘泥 酷烈 類推 去ぬ 淪落 押しなべて 有為転変 忸怩 直截

 

 

心許ない

どこか頼りなくて不安に思うさま。待ち遠しい。じれったい。

Ex.奴に仕事を任せるのはまだ心許く、結局俺が人一倍の量をこなさなければならない訳で、そう考えると家路に就きたくなる。

 

忌避

嫌って避けること。

Ex.以前勤めていた職場に近づくのを忌避している。

 

お茶を濁す

表面だけ取り繕ってその場を切り抜ける。

Ex.院長は私の、科学的真実を追求する質問にはいつもお茶を濁し、喫煙所に逃げ込もうとする。

 

スポイル

扱い方を誤るなどして、そのもの本来の性能が発揮できない状態にする(狭義では人を甘やかしすぎて駄目にすることを指す)。

Ex.彼は生まれ落ちた世界に恵まれず、その所為でスポイルされてしまった。彼がそのことを自覚するのに三十余年の歳月が掛かった。

 

無頼

定職を持たず、素行の悪いこと。ならずもの。頼るところのないこと。

Ex.彼は無頼に憧憬を抱く小心者で、つまりまあアウトローに憧れているんだ。

 

韜晦

自分の才能・地位・身分・行為などを包み隠すこと。人の眼をくらますこと。

Ex.いったい何の理由であなたは韜晦し続けるのか。正体を見せたらどうですか。

 

遁辞

責任や関わり合いなどを逃れるための言葉。言い逃れ。逃げ口上。

Ex. もっともらしい言葉で修飾しているが、遁辞に過ぎない。

 

退嬰

新しい物事を積極的に受け入れていくような意気込みがないこと。尻込み。保守。旧来のものをそのまま受け継ぐだけのさま。

Ex.退嬰的な組織には魅力を感じない。しかし組織とは得てしてそういうものではないか。

 

駘蕩

大きくのびのびとしているさま。穏やかなさま。のどかなさま。

Ex.駘蕩な春風がふわりと吹き抜け、頭上の木の葉の一枚一枚がさらさらと、わずかながら靡いた。

 

粗忽

軽はずみなこと。注意や思慮が行き届かないこと。不注意なために起こった過ち。失礼。無礼。

Ex.彼の粗忽な振る舞いは、母親の産道から生まれ落ちた瞬間から始まっていた。

 

訝る

変だと思う。不審に思う。様子を知りたいと思う。

Ex.哲学という哲学を全て訝っている。

 

是非

良いことと悪いこと。可否。当否。物事の良し悪しを論ずること。道理のあることとないこと。

Ex.今はこの政策の是非を論じることは控えます。今日はもう遅いので明日にしましょう。おやすみなさい。

 

村八分

村社会の秩序を維持するため、制裁としてもっとも顕著な慣行であった絶交処分のこと。

Ex.村八分は村社会の闇です。

 

寂寥

もの寂しい様。ひっそりしているさま。心が満たされず、わびしい。

Ex.寂寥とした光景を眺めているうち、何故か心拍数や血圧が下がってきた。

 

泰然

落ち着いていて物事に動じないさま。泰然自若。

Ex.奴は泰然とした態度で椅子の上に胡坐をかいて、ベースをベンベン弾いていた。

 

リテラシー

読み書き能力。また、ある分野に関する知識やそれを活用する能力。

Ex.最低限のコンピュータリテラシーがないと、うちじゃあ働けないよ。

 

玄妙

道理や技芸が、奥深くて微妙なさま。

Ex.彼のギターのカッティングは玄妙で、一朝一夕には真似できない。

 

驟雨

急に降り出し、強弱の激しい変化を繰り返しながらも、急に降りやむ雨。にわか雨。夕立。

Ex.驟雨で濡れた体と体がぶつかる。

 

一瀉千里

少しも休まずに、滞ることなく行われる形容。文章や弁舌が滑らかでよどみのないこと。

Ex.彼の語りは一瀉千里で、聴く者全てを圧倒した。

 

渡りに船

困っているときに、好都合な話が持ち上がること。望み通りの条件が与えられること。

Ex.突然のにわか雨に立ち往生していたのだが、渡りに船とばかりに傘の置忘れがあった。なあに、少し借りるだけさ。失敬失敬。

 

間歇

一定の間隔をおいて、物事が起こったりやんだりすること。

Ex.窓の外で、何かが何かにぶつかる音が間歇的に鳴っている。

 

来し方

通ってきたところ、方向。過ごしてきた時間、過去。

Ex.来し方は虚無でふ。

 

蓮っ葉

女性の態度、態度が軽薄で下品な様子だ。

Ex.蓮っ葉な女が三々五々、コンビニの前に屯している。ここは迂回しよう。

 

玄人

一つの物事に熟達した人。専門家。本職。

Ex.間違えて玄人向けの製品を買ってしまい、どうしていいかわからない。

 

身を結ばないさま。無駄。誠実さに欠ける。はかなくもろい。扱いがおろそか。粗略。役に立たない。せっかくそうしても、それだけの効果がない様子。

Ex.人の好意を徒にするのがどうも得意らしい。

 

双眸

左右の瞳。両眼。

Ex.突然そこにいた猫が双眸を光らせた。

 

聾する

耳が聞こえなくなる。耳を聞こえなくさせる。

Ex.このスイッチを押せば、彼奴の耳を聾することができる。

 

顕著

際立っていて目に付くさま。著しい様。

Ex.教授は防衛機制における合理化の顕著な例を示した。

 

念慮

心の中で思いめぐらすこと。思念。思慮。

Ex.ふと、全てを焼き尽くしたい念慮が湧く。

 

常套

古くからの習慣。ありふれたやり方(陳腐さを批判した言い方)。

Ex.彼の常套手段はもう知り尽くし、理論武装もしているから負けることはない。

 

邪慳

意地が悪く、人に対して思いやりのない様。

Ex.どうも彼女は邪慳に扱われた方がいいらしい。

 

年嵩

年上であること。

Ex.かなり年嵩だと思われるが、若々しい気力も垣間見られ、全身から山吹色の光を放っているようであった。

 

露骨

感情や本心をむき出しに示すこと。あからさま。

Ex.彼女は上司から通せんぼされるという、露骨な嫌がらせを受けたそうだ。

 

未練

諦めきれないこと。思い切りの悪いこと。まだ熟達していないこと。未熟。

Ex.私は退職いたします。この会社に未練はありません。とっとと更地にした方がよいと思われます。

 

拘泥

第三者の眼から見ればどうでもよいと思われることにこだわりを抱き続けること。

Ex.マニュアルに拘泥して神経をすり減らす。

 

酷烈

相手の立場や事情などにかまわず、何かが厳しく行われる様子だ・

Ex.酷烈な稲妻が眼前に、四つ!

 

類推

似ている点をもとにして他のことを推し量ること。既得の知識を応用して、同じ条件にある未知の物事について多分そうではないかと判断すること。

Ex.所詮類推でしかなく、決定的な情報ではない。

 

去ぬ

行く、行ってしまう。去る。時が過ぎ去る。死ぬ。腐る。

Ex.はよ去ねや。

 

忸怩

自分の行いについて、心の中で恥じ入るさま。

Ex.あの時は満面の笑みを浮かべておりましたが、実は内心忸怩たる思いでした。

 

直截

まわりくどくないこと。はっきりとズバリ言うこと。

Ex.もうこうなったら直截言ってやろうじゃないか……明日になったらな。

部屋を抽象的に模様替え

 境弌は有り体に言えば、具体性のあるものが嫌いだった。具体性のあるものとは具体的なもののことであり、それは例えばスタッドレスタイヤ、草刈り機、突っ張り棒、傾いたテーブルの脚に噛ませた厚紙、蛍光灯、トイレ掃除用のバケツ、滑り止め付き軍手、キンチョールなど。これらは全て目的や用途がはっきりしていて、実学的というか、存在理由がはっきりしている。その曖昧さと汎用性の無さに境弌は辟易するのだった。意味があればあるほど境弌は厭悪した。例えば滑り止め付き軍手を手にはめてしまったら、その滑り止めの特性を最大限に使った作業をしなければならない。そうなってしまうと、俺は俺でなくなってしまう。どういうことかというと、境弌は、自分はミュージシャンにも画家にも作家にもなれる潜在的可能性、半端ないポテンシャルを秘めている、という強烈な自意識を携えていた。そんな俺が軍手をはめてしまったら、なんか段ボールを運んだり、鉄パイプで足場を組まなければならなくなってしまう。それは嫌だ。自由じゃなくなる。俺の潜在性を顕在化させるには自由が必要なのだ。草刈り機を持ってしまったら、俺は草刈人になるしかない。草刈人。草を刈るだけの人。何たるつまらん存在なのだ。俺は草を刈る為に生まれてきたわけじゃないんだぞ。具体性とは、境弌の潜在性、可能性を奪ってしまう、陰険な対象でしかなかった。

 境弌がこのような歪な思考をしているのは、彼の抽象的な思弁の矛先がどこにもないという理由もあった。彼の周りに抽象的思考・会話ができる人は、誰一人とていなかった。皆がしている会話の内容は、具体具体具体、物質物質物質の連続で、概念とか哲学の、ふんわりとして機知に富んだ、悪く言えば地に足がついていない話を交わせる相手は皆無であった。言わば境弌は、知性的な会話に飢えていた。彼の抽象的思弁的、或いはイメージといったものを共有できる友がいたら、このような歪んだ性格にはなっていなかったかもしれない。

 ともあれ、境弌は具体性から距離を置きたかった。だから彼は自分の部屋にある、具体的物質を排除しようと考えた。彼の部屋にはもう無用の、具体の残骸がひとまとまりにして置いてあった。それは振動マッサージ機やドーム型のガラス細工や、イヤフォンやら六角レンチやらであった。それらがどのような経緯で今この部屋にあるのか、境弌は意図的に思い出そうとはしなかった。できれば忘れたかったのである。捨てようとするのは過去を葬りたいという思いもあるのかもしれない。でもその行為を、俺は今まで何度行ってきたのだろう。境弌は何かを捨てるたび、生まれ変われると信じていた。捨てなければ先には進めない。説得力のある言葉じゃないか。その言葉を信じて、境弌はひたすらに、あらゆるものを捨て続けてきたのだ。その所為で彼には思い出が一つもない。

 境弌は寂しかった。

 部屋から具体性を除去したら、部屋の抽象度が上がったりするのだろうか。というか抽象的な部屋って何だろう。特定の場所に留まらなかったり、入るたびに家具の配置や配色が変わったりするのだろうか。「部屋」というのは抽象的な概念だろうか。具象度を上げれば、寝室、リビング、事務所、相談室とかになり、抽象度を上げれば、なんだろう、「空間」だろうか。

 境弌は今いる空間から、具象の残骸を抱え、違う空間に移動した。

 

 境弌の家の庭は砂利が敷いてあり、それは灰色とも黄土色ともつかない、描写の甲斐がない地味な色合いだったが、その日は何故か美しい砂漠のような、ゴールドに近い黄色で光輝いて見えた。それは空の色彩との対比で、一層そう見えているのかもしれない。空の地平線に近い部分は、横一直線に深い藍色に染まっていて、そこから天にかけて徐々にウルトラマリンに変化するグラデーションを描いていた。その空に、朧げに白い三日月が浮かんでいた。地面も、空も、とても鮮やかな色で、綺麗だった。

 境弌はその庭と空と三日月を、今いる空間から眺めていた。外の景色と中の空間との境目には、障子のような形のシルエットが在って、それは逆光によって漆黒に塗りつぶされているように見えた。境弌はその深い黒を見て、今は午前三時くらいだ、と直覚した。

 地平線の暗さを見れば確かにそのくらいの時刻かも知れない。しかし庭が発している明るさからは、むしろ午後の三時くらいの陽気さであった。空は夜で、地は昼。

 不思議な光景だった。たまに快晴の状態で雨が降っていることがあるが、そのような感覚とでもいえばいいのだろうか。静寂で、時が止まっているかのようだった。

 

 境弌はその現実離れした世界に踏み出した。ふと、空に何か小さいものが横切っていくのを、境弌の眼は捉えた。

 それは一瞬で白色だと認識できたので、初めは雲かと思った。しかし雲にしては流れていくのが妙に早く、遠目から見た飛行機のようであり、しかし飛行機にしてはずいぶん低いところを飛んでいるかのように見えた。あれは家の屋根くらいの高さだと思う。それはいわゆる等速直線運動で、どこか自然界の法則を無視しているかのように飛行していた。境弌はそれの正体を確かめるべく、自分の眼を調整し、対象に向けてズームインした(そのような能力を身につけていた)。

 その白い物体は、「#」(シャープ)を5個か6個くらい、ランダムに繋げたような、或いは壊れた格子の一部、みたいな形をしていた。そしてそれは精密なドット画像を拡大して見た時みたいに、輪郭がぼやけていた。

 そしてその芥みたいな白いオブジェクトは、シューティングゲームの弾丸みたいに一定の速度で、境弌の眼の右端から左端まで横切り、やがて消失した。

 

 境弌は視線を元に戻し、前を見た。キラキラと光る砂漠のような庭、藍色に横走る夜のような地平線、天に昇るに従い海色に変化する空、そこにエアブラシで描いたような白い三日月が浮かんでいた。境弌は具体の残骸を捨てるため、庭と空の境目に向かって歩き出した。程なくして境弌もろとも全てが消え去った。

語彙増殖②

 寓意 なおざり おざなり 面従腹背 反駁 年百年中 後架  言い条 愚昧 沈思黙考 籠絡 円熟 偏狭 浅薄 虚室 荷役 臍を噛む 骨惜しみ 人足 却って 業腹 由 狭小 購う 同衾 折檻 或る 恭順 辞さない 催す 偶さか 眼目 精悍 破顔 胸襟を開く 困憊 喚声 ユニーク プリミティブ 空涙 空手形 御暇 恒常 漸進 精緻 網羅 安寧 無私 形容 叙事 叙情 叙景 冷戦 轍 母集団 最前 口吻 不承不承 言下 大仰 スティグマ プロレタリア ワナビー 岡目八目 遮二無二 拙速 暗澹 深更 僅々 袖にする 詮無い 僥倖 十人並 形貌 凄愴 彼奴 開陳 無聊 滔々 白眼視 所期 厭う 慄然 婉曲 象牙の塔 いみじくも ドラスティック 日和見 オポチュニズム 成功裡 緩慢 阿る 太平楽 ペシミズム 憂い 悲喜交々 砂上の楼閣 老残 青天井 

 

反駁

他人の主張・批判に対し論じ返すこと。反論。論駁。

Ex.彼の主張はマジでイミフだと彼女は反駁した。

 

起こり。原因。

Ex.人生の失敗の因を探る。

 

愚昧

愚かで道理にくらいこと。馬鹿。愚か。

Ex.私の家族は皆愚昧です。

 

円熟

人格や知識・技術などが充分に発達し、豊かな内容を持つようになる。むやみに感情的になることなく、穏やかで、人間味に富むようになること。

Ex.浪人生のくせに性格が円熟している。

 

却って

予想などとは反対の結果になるさま。逆に。

Ex.欠点があるから却って彼女が好きだ。そういう、欠点を愛せるだけの大きい器を持った自分がもっと好きだ。

 

業腹

非常に腹の立つこと。忌々しいこと。

Ex.彼のアドバイスに従うのは業腹だが、反駁の余地がなく認めざるを得ない。反駁できない自分に対しても業腹であり、なんかもうすべてに対して業腹。俺は今日から業腹。

 

或る

事物・人・時・場所などを漠然と指して言う語。また、それらをはっきりさせずに言う時にも用いる。

Ex.或る悲しい出来事が津々浦々に発生しました。

 

精悍

動作や顔つきが鋭く、力強いこと、さま。表情などに逞しさがみなぎっていて、どんな危険や困難にも立ち向かっていくといった印象を与える様子だ。

Ex.彼女は女性であるにもかかわらず表情には精悍さがあり、中性的な魅力を放っている。

 

破顔

にっこりと会心の笑みを浮かべること。

Ex.彼の努力で錬磨させたジョークは人を破顔させた。

 

ユニーク

同じようなものが他にあまり見られないさま。

Ex.君の発想はとてもユニークだよ。悪い意味でね。

 

プリミティブ

自然のままで、文明化されていないさま。原始的。素朴なさま。幼稚。

Ex.彼のプリミティブな発想に閉口する。

 

御暇

人の前を去ること。帰ること。

Ex.そろそろお暇します(あー早く帰りてえ)。

 

恒常

変化がなく、常に一定であること。

Ex.新居は恒常的な陰険さに包まれている。

 

漸進

順を追って少しずつ進んでいくこと。対義語は急進。

Ex.まあそう焦らず、漸進的にやっていこうじゃないか。ばはは。

 

精緻

非常に細かい点にまで注意が行き届いていること。極めて綿密なこと。

Ex.そんな精緻な描写は誰も求めておらん。

 

網羅

そのことに関する全てを残らず集めること。

Ex.俺に関する噂を網羅したリスト。

 

安寧

世の中が平穏無事なこと。安らかなこと。

Ex.社会の安寧を乱すために彼は生まれてきた。

 

形容

物事の姿・状態・性質などを言い表すこと。他の言葉や例えを使って言い表すこと。

Ex.この料理は「ゲロマズ」という以外にどんな形容が可能だろうか。

 

叙事

事件や事実をありのままに述べ記すこと。客観的に述べ記すこと。

Ex.彼の文体はあまりにも叙事的で、人間味が感じられない。ひょっとしたら人間じゃないのかもしれない。

 

叙情

感情を述べ表すこと。直接相手の心に訴えるようにあらわすこと。感情を盛り込んで述べ表すこと。

Ex.叙情的な旋律を奏でたらもの凄いブーイングをくらった。

 

叙景

景色を目に映った通りに述べ表すこと。景色を詩や文章などに表すこと。

Ex.冒頭の叙景部分は少し文豪を気取っていないかね。

 

冷戦

直接的に武力を用いず、経済・外交・情報などを手段として行う国際的対立抗争。そのような緊張状態。

Ex.あの夫婦はもう百年以上冷戦状態だ。

 

車が通った後に残る車輪の跡。

Ex.ぬかるみの轍を追っていくと、そこは雪国でした。

 

最前

ついさっき。先刻。今から見てほんの少し前。

Ex.最前から脱腸しているのですが。

 

プロレタリア

資本主義社会で生産手段を持たず、自分の労働力を資本家に売って生活する賃金労働者。無産者。

Ex.君と僕は一生プロレタリアだ。

 

拙速

出来は悪いが仕上がりは速いこと。

Ex.俺の仕事の拙速ぶりは自他ともに認めていて、もちろんそれでいいとは思っていない。

 

暗澹

薄暗く凄味を感じさせるさま。将来の見通しが暗く、何の希望も持てず悲観的なさま。

Ex.僕の心情をこれ以上ないくらい、端的に表せる言葉があるんですよ。暗澹。暗澹ですよ。あんたーん。

 

袖にする

今までの親しい関係を断って、粗末に扱う。すげなく扱う。

Ex.関係するすべての人間を袖に扱い、生まれ変わったつもりでいる、我ら。

 

僥倖

思いがけない幸運。幸運を待つこと。

Ex.僥倖を待つ、負け犬の人生。

 

十人並

容色・才能がずば抜けて優れているわけではないが、またそう見劣りもしない様子だ。

Ex.容姿は十人並みでも、性格があじゃぱーですよ。

 

形貌

形、姿、容姿。

Ex.そんなエイリアンみたいな形貌の人間がいるか。

 

凄愴

痛ましく悲しいこと。

Ex.凄愴たる結婚式場。

 

彼奴

「あいつ」のさらにぞんざいな言い方。

Ex.彼奴にそんな小細工をする知能はあるまい。

 

無聊

退屈なこと。わだかまりがあって、楽しまないこと。心配事があって楽しまない。「聊」は楽しむ意。

Ex.昨日雇われた新人は終始無聊な態度で仕事をしていた。

 

白眼視

自分たちとはすむ世界が違うのだぞと言わんばかりに、よそよそしい態度をとること。冷たくあしらうこと。

Ex.世間から白眼視されて二十年たつ。

 

厭う

いやに思う。いやに思って避ける。

Ex.どんな苦労も厭わず……だなんて嘘に決まってるじゃないすかあ。

 

慄然

恐ろしさで身の震えるさま。

Ex.彼は自身の基本的価値観のズレを認知し、慄然とした。

 

婉曲

遠回しにそれとなく表現するさま。

Ex.どういう心理でこんな婉曲な表現をしようと思ったのか。

 

象牙の塔

俗世間を離れて学問や芸術に専念する境地のこと。特に、世間と没交渉な態度で送る学究生活や、大学の研究室の閉鎖的な世界のこと。

Ex.象牙の塔に閉じこもる三匹のゴリラ。

 

いみじくも

非常に巧みに。適切に。

Ex.ブランド物は1コーディネートに1個までとは、いみじくも言ったものだ。

 

日和見

物事の成り行きを見て、有利な方につこうとすること。オポチュニズム。定見がなく、形勢を見て自分に都合の良い方に味方しようとする態度。便宜主義。ご都合主義。日和見主義。機会主義。

Ex.会議に参加した全員が日和見主義者で、議論が進展しない。

 

緩慢

動作がゆっくりしていて、のろいこと。処置などが手ぬるいこと。変化の予想される物事の変わり方が激しくない様子。

Ex.猿にしてはあまりにも動作が緩慢すぎる。

 

憂い

心配・悲しみ・悩みで心が閉ざされ、憂鬱なこと。

Ex.一日に四十回は憂いでいる。

 

砂上の楼閣

基礎がしっかりしていない為、すぐ壊れてしまう物事のたとえ。また、実現可能性のない机上の空論のこと。

Ex.5時間以上議論を重ねて出した結論が砂上の楼閣であることに、まだ誰も気づいていなかった。

 

かくれる。ひそむ。くらい。あきらかでない。かすか。ほのか。おくぶかくてものしずか。かたすみ。夜。あの世。冥途。鬼神。超現実的なもの。とらえる。とじこめる。

Ex.幽かに漂うように生きているね、彼は。

或るイメージの描写

 境弌の家の敷地内には、いや敷地外にもだが、林があった。森と形容するには半端な広さと樹木の数だった。裏庭のそれは特にそうなのだが、繁茂した木々は年百年中日光をブロックしていて、どんなに快晴であってもその林の中は陰気だった。奥の方に進めばワラビや筍などが採れるらしいが、境弌はそんな田舎臭い食物には関心がなかった。

 庭はフットサルができるくらいの広さで、上から落とせば軽の車だったらぺしゃんこにできる位の大きさの岩が3つあった。由来は知らない。建造物は、母屋、隠居、納屋が3棟。庭木が多数。出来の悪い盆栽と観葉植物も無数にあったが、木に囲まれた環境下ではそれは半ば周囲と同化していた。

 敷地内から外のコンクリートの道に出られるところには、高さ15メートルくらいの、この辺り一帯に生えている樹木のなかではユニークと言えるだろう、白い像の肌みたいな幹の巨木が在った。巨木は天に行けば行くほど枝を展開していて、その枝には、目視で数えるにはちと面倒な数の、深緑色の葉が茂っていた。その葉の多くには、今にも地に滑り落ちそうな様子で水滴が付着していた。今朝方雨が降っていたのである。

 ふわりと、髪の毛が軽くなびくくらいの風が発生した。それは葉に付着した水滴を払いのけるには充分な力だった。

 巨木の末端部分は僅かながらに揺曳し、数多の雫が重力に従って地に落ちていった。

 

 境弌は図書館に出かける為、ガレージとして利用している納屋に停めてある、自車のマーチに乗り込んだ。左足でクラッチを踏み込んで、右手でキーを奥側に回し、エンジンを掛けた。境弌の車はマニュアル車だった。

 今思えば普通のオートマでもよかったな、と境弌は思う。マニュアル車を選択したのはその方が運転が楽しいだろうという考えからだったが、実際に運転してみれば何てことはない、期待していたシフトレバーによるギアチェンジは、別に面倒には感じないものの、特に楽しみを見出すこともできず、ただただそれは歯車を変える動作でしかなく、何らの感情も沸いてこなかったのであった。バイトで普通のオートマ車を運転したことがあったが、自分の車を運転する感覚と何ら変わりはなかった。

 今思えば映画に感化されていたのかもしれない。或る暴力的、それは猟奇的と形容してもいいくらいの、素行が悪い刑事が主人公の映画なのだが、その刑事がマニュアル車を運転するシーンがあった。そのシーンは後部座席からのアングルで、画面中央にシフトレバーを操作する刑事の左手が映し出されていた。状況に合わせて的確に、しかし荒々しく左、右、奥、手前に動かすその所作を観て、境弌は男性的な魅力を感じとった。それでマニュアル車の運転にある種の憧憬を抱いていたのかも知れない。

 しかし実のところ、理由は他にあった。境弌は高校を卒業してしばらくした後、教習所に通い出したのだが、そこには境弌の同級生らがいた。そして同級生たちの半数くらいはオートマ限定の免許を選択していたのである。それを知った境弌は、ならば俺はマニュアルを選択しよう、と考えた。オートマ限定の資格ではオートマ車しか運転できない、しかしながら、マニュアル車の資格を取ればオートマとマニュアルの両方を運転できる。これはどう考えても、マニュアル免許の方が優れている。

 実際今の自家用車はほとんどオートマ車になっているわけで、オートマ限定だからといって困ることはほとんどないのだが、人から抜きんでた才を持ち合わせているわけでもなく、ならばせめて勉学に励めばいいものを、そんなものは才能がない奴がやることだと誤った考えを持っている、実は何の才能もなくプライドだけが高い境弌は、マニュアル免許を持つことで優越感を得たかったのである。それはオートマ限定の免許所持者だけに通用する、えらい応用範囲の狭い優越感だった。境弌はこの優越感に対して、無自覚であった。優越感というのはそもそも自覚しにくいものなのだが。

 しかしながら、後年マニュアル免許が必須のバイトをする機会が訪れたので、あながちこの選択が間違っていたという訳でもなさそうに思える。

 

 助手席の足元には小さなゴミ箱が置かれている。ゴミ箱には、肌色のビニール袋に包まれたコンビニ弁当の箱が、沈没していく船みたいに捨てられていた。もう満杯だな。そういえば今日は火曜日でちょうどゴミの日だ。今だったらまだゴミは収拾されていまい。図書館に行く前に捨てに行こう。

 境弌はギアを一速に入れ、のろのろと車を発車させた。家の敷地から外に出る辺りで、2速にギアチェンジをしようとしたその時だった。境弌の車のフロントガラスに無数の雨粒が飛来して、タラタラッと小気味いい音を立てて弾け飛んだ。境弌の耳がその音を捉えたのとほぼ同時に、フロントガラスが粉々に砕け散った。雨粒と一緒に、人間の形をした何かが、直立不動の姿勢で落ちてきたのだった。その人間は両足でスタンプをするかのようにフロントガラスを突き破ってきて、そのまま車のシフトレバーにぶち当たり、破壊した。境弌はガラスの飛沫を浴びて、滅茶苦茶になった。

狷介な老人が200人くらいいる

 自分の語彙を増やすため、媒体を問わずとにかく自分が知覚した言葉のうち、意味が解らなかったり、曖昧なまま理解している言葉の意味を調べ、ノートに記す、という作業を数カ月前から行っている。ここで一回、それらの語句を以下に記したいと思う。

また、調べ上げた語句の中には

・自分の血肉にしたい言葉(日常でも適宜使いたいという意味)

・心理学に関係している言葉

とがある。血肉にしたい言葉はクリムゾン、心理学に関係する言葉はターコイズブルーにして編集している。

 

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ノードラッグ、ノンアルコールで爆発しよう

「今迷っていることがある」

「迷っていることとは?」

「薬を飲んで今の辛い状態を軽くするか、それとも飲まずに苦しいまま過ごすか」

「薬とは?」

「精神科の薬。脳に直接影響を与えるもの」

「辛い状態と言ったが、具体的にどんな状態?」

「……それはまだ具体的に言語化できない。思いつく限りで言えば、虚無感があって、孤独感があって、未来に絶望していて、何の楽しみもなくて……っていうとこ。抽象的で何一つ分からないだろうけど。なんか具体的に言うことに対して羞恥があるな」

「ああそう。しかし薬を飲んで、それらの状態が緩和されるのであれば服用すればいいのでは?」

「それに対しては少し憚りがある」

「憚りとは?」

ナチュラルなものが一番強い、っていう考えがあるから」

ナチュラル?」

「うん。つまり、自然な、何にも毒されていない状態、薬とか酒とかタバコとか、そういうのに依存していないって言うことかな。ジャンキーってのは良くない。……まあ酒は飲んでるけど。

 この思想は昔聴いていたロックンロールのバンドの歌詞に影響されたものなんだ。真心ブラザーズっていうバンドなんだけど。真心の曲で『素晴らしきこの世界』っていうものがあって、その中の歌詞に、

『ノードラッグ、ノンアルコールで爆発しよう』

というものがあったんだ。俺はそれにすごく感銘を受けてね、そう、そうやって生きるべきなんだ、って。酒の力で暴れるのはみっともない、ナチュラルな状態で生きる力を爆発させよう、っていう」

「なるほど。つまり薬を服用すると、そのナチュラルな状態ではなくなってしまい、自分の思想に反してしまうと」

「うん……まあそうなんだけど、ただ……どうなのかなあ、別にそんな思想もうどうでもいいっていうか、もう生きていく気力なんて、ほとんどないわけ。昔は未来に希望を持ててたんだけど、今はもう持てないわけ。等身大の自分を知っちゃったのね。未来に希望を持てるから人は努力できるわけであってさ、もう俺は未来に対して希望がないわけ。だから頑張れないわけ。今までストイックにやりすぎてたのかもしれないし」

「……なんか話が全然見えねえんだけど」

「ああそう。とにかくまあそんなだから、もう薬を飲んでもいいんじゃないかっていう気持ちはある。自分の思想を守るよりかは、今の虚無感が晴れるほうを取る……かなあ。でもあれ副作用とかもあるんでしょ。それもちょっと気にはなるけど」

「まあ好きにしたらいいんじゃね」

「……でもなあ、その前に一回、カウンセリングを受けてみたいんだよなあ」

「カウンセリング?」

「そう。つまり、薬物療法じゃなくて精神療法。薬を使わずに済めばそれに越したことはないしね。そう考えてしまうあたり、やっぱりまだナチュラル志向なんだな」

「カウンセリングねえ。なんかうさん臭そうだぜ。ただ悩みを相談してアドバイスをもらうだけだろ。それで今の状態が解決するかね」

「いや、アドバイスはしないらしいよ。俺は河合隼雄さんのカウンセリングの本を読んだことがあるんだけどね、どうも解決する力というのは、クライアント……まあ相談する側の方だね、その方が持っているということなんだよ。そしてカウンセラーはそれを引き出してやって、アドバイスというのは基本しないということなんだ」

「ほう」

「俺はその考えが面白いと思った。今の状態を覆す力……それは、俺自身が持っているんだ。そう考えると、少し希望が湧いた」

「……」

「もっとも、全てのカウンセラーがそう考えているわけじゃないだろうが」

「そりゃそうだな。どこのカウンセリングルームに行こうとしているんだ?」

「ここから北西の方に所に行こうと思う。かなり遠いんだが。そこは二人のカウンセラーが同時にカウンセリングするらしい」

「変わってるな」

「とりあえずそこに行こうと思っている。ただ今月のバイト代が入ってからだな。今金欠なんだよ」

 

 あたかもカウンセリングを受けるのは初めてのような語り口調だが、実は以前一回受けたことがある。そしてその事実は両者とも周知の事実であった。何故なら二人は同一人物だからである。これはrememberの、自分自身との対話であった。

パンダみたいな困り顔

 バイト先のコンビニで、俺は一人の女子高生と同じシフトに入って一緒に働いている。背が160センチもない、キャピッとした感じの子だ。

 結論から言えば、この子は甘えている。何か失敗をしても多めに見てもらおうとする。常に困ったパンダのような顔をしていて、人からフォローされるのを待っている。ケアレスミスを、エヘヘヘ、とか言って許してもらおうとする。それが通用する場面や人もあるだろうが、毅然とした態度をとる職場の方がまともだろう。積極的に仕事をする場面もあるが、それは裏(厨房)に入って備品の補充をしたり、ファーストフードの作り置きをしたりと、マイペースにできる仕事ばかりだったりする。ほとんどの仕事は時間と戦っているわけであり、その戦いにはあまり関わろうとはしない。

 新しい仕事も覚えようとはしない。今日店長から頼まれて、仕方なく雑誌の返品の仕事を教えたのだが、終始例の困り顔で仕事の処理をしており、俺が、次はここをこうしてあれをこれして、とりあえずここまでやってみて、と教えるのだが、その一連の処理を終えた後、俺に、終わったんですけど、という視線を送るだけで、何も報告してこない。シカトしてもいいのだが、店長の指示の手前それもできず、あ、終わった? とわざとらしく彼女に近づき、次の指示を出して……という感じだ。

 まあ、たかがバイトだし、という考えもある。しかし彼女が仮に正社員として何らかの職業で働いたとしても、一人前に仕事ができるかどうかは俺には疑問だ。あれはおそらく、自分の価値観が社会では通じないことに狼狽している。その価値観はおそらく彼女の生まれた環境で培われたもので、彼女自身そのものと言ってもいい。自分はここでやっていけるのだろうか……その不安があの困り顔を作っている。

実は彼女は容姿がそこそこいいので、例の笑って許してもらおうとする処世術が往々にして通用してしまっている。もちろんそれが甘えなのだが、その甘えを粉砕する嫌われ役を、一体誰が担うのだろうか。一応今は店長が毅然とした態度をとっているが……

以前、彼女がオーダーされた軽食を作っていて、それがトロトロした動きで時間がかかっていた。ようやく彼女がそれを作り終え、客に持って行ったときに、例のあの困り顔で、お待たせしちゃって申し訳ありません、エヘヘヘ、みたいな感じで応対したのである。

俺はそれを見て、お客さん……

「遅えんだよ!」

って一喝してくれませんか、と願った。