rememberのゆめにっき

現実のことも書くが

かまいたちにでもやられたかのように

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 電車の中。多くの人が席に座っていたが、それらのほとんどは老人であった。俺はその老人たちを見て、以前福祉関係の施設で働いていたことを思い出した。

 電車は緩やかなカーブを描きながら進行している。しかし前に向かって走っているのか後ろに向かって走っているのか定かではない。窓の外をのぞくと眼下に青い海が広がっていた。どうやらこの電車はかなり高いところを走っているようだった。俺はその状況を認識したとき、以前東京で暮らしていたときに経験したアルバイトのことを思い出した。そのバイト先にはある電車に乗って通勤していたのだが、その電車の窓から見える光景が今俺が乗っている電車のそれとそっくりだった。その電車はゆりかもめといった。

 一人の老人が俺にコンビニ弁当を差し出し、これを温めてくれと俺に言った。俺はその老人を見て、最近バイト先のコンビニによく来る、足取りが覚束ない50歳くらいの、赤い野球帽を逆向きにして被っている男性の客を思い出した。電子レンジは隣の車両にあった。

 

 電車や老人たちや電子レンジなどはどこかに消え去ってしまった。天井みたいな位置から俺は今いる空間を見下ろしている。床も壁も仄かにくすんだような白い色で、壁の一角にはドアがあった。この空間の前の方に教壇のようなオブジェクトがあった(というより「前」の方にあったからそれを「教壇」だと認識した、と言った方が正確か)。俺はそれらを見て、ここは学校の教室だなと思った。俺は母校である小学校の音楽室を思い出した。ちょうどこの空間の広さが、音楽室のそれと同じくらいだった。

 50脚ぐらいの椅子が教室の左右に均等に分けられ、前を向いて規則正しく並べられていた。俺はその配置を見て、前述した福祉施設のことをまた思い出した。その施設では何かしらの行事を行う時、このような配置で椅子を並べるのであった。また、右側に並べられている椅子の下には紺色のカーペットが敷かれていた。カーペットにはマンダラのような、中東的な模様が施されていた。俺の部屋に敷いてあるカーペットと同一の物のように思った。

 俺は、白い人型のオブジェクト、みたいな正体のはっきりしない10人ほどのもの達と一緒に、左側に並べられていた椅子を片付け始めた。その時俺の網膜に、チョコレート色の地に描かれた金色のセンテンスが映し出された。それの具体的な内容は思い出せないのだが、この文章はこれから起こる未来の出来事を予知しているものだ、という気持ちを抱き、感慨深くなったのは覚えている。俺は、これが文学の力か、と思った。

 椅子を片付け終わった。いつの間にか右側の方の椅子に20人くらいの子供たちが座っていた。その子供たちはみな国外の人間の顔つきをしていた。俺は、ここはアメリカの教室なんだな、と思った(どうやら俺は、国外という言葉からはアメリカを連想するらしい)。俺が見ている映像は、真っ白い背景をバックに、その子供たちの中の一人のロングの髪の毛の女の子がバストアップの状態で映っている、というものに切り替わった。その女の子の髪の毛は、そこに上昇気流が流れてでもいるかのように宙にふわふわと舞っていた。突然、その揺曳している髪の毛が、かまいたちにでもやられたかのように切断された。切断された髪の毛の長さは短いが、もの凄い速さでその切断現象が連続的に起こった。その現象は何の音も伴わず静寂に起こったが、髪の毛が散っていく様はとても激しいもので、あたかも「ばすばすばすばす」という音が聴こえてくるかのようだった。どうやらこれは散髪しているようだ。透明な美容師が散髪している、という映像を早送りにしているようでもあった。

 髪の毛の切断現象は終わった。女の子の髪型はシャギーが入ったセミロングになっていて、散髪前と比べるとずいぶん垢抜けたように感じた。軽音楽でもやっていそうな雰囲気だった。

 

 そういえばその子供たちの中に、小学校の時の同級生の渡辺君の姿が見えたのを思い出した。渡辺君は背が小さく、頭が悪かった。

 でも背は小さいことはともかくとして、俺は何故彼に対して「頭が悪い」という評価を下しているのだろう。何かそう思わせるだけの出来事があったんだっけかな……と記憶を遡ってみたところ、ある一つのエピソードを思い出した。

 国語の授業だった。教科書の朗読を行っていて、渡辺君が指名されて彼は教科書を読み始めた。すると渡辺君は、教科書の文中の「夕べ」という語句の「夕」の部分を、カタカナの「タ」と勘違いして、それを「たべ」と読んでしまったのだ。当然私を含めた周囲の者たちは渡辺君を嘲笑った。この出来事のため、俺の記憶の中の彼には「頭が悪い」という印象が付随しているのだ。

 

 きっと、謝った読み方を口にしてしまうことが、「頭が悪い」っていうことなんだな。

 

 以前自分が働いていた福祉施設は、勤務時間終了1時間前に職員全員が事務室に集まり、そこで終礼を行うという規則があった。その終礼時の段取りに、一人の職員がその日にあった出来事が記録されている日誌を読み、その内容を皆に伝える、というものがあった。ある日その役が俺に回ってきた。その日誌の一部には「花木センター」という語句があった。それは「かぼくセンター」と読むのだが、俺は誤って「はなぎセンター」と読んでしまった。

 

 という出来事を思い出した。