rememberのゆめにっき

文筆の訓練のようなもの

女性のフォームで3ポイント

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 10枚以上の畳が敷かれていてそこは道場のようだった。明かりは点いていないようでまるで雷雲が立ち込めた日の日中のように薄暗かった。

 その部屋の壁にはバスケットボールのゴールが掛けられていた。そこに俺が行っている学校の生徒のYさんが現れフリースローをし始めのだが、もの凄くへたくそだった。ボールをゴールに入れるためには放物線を描くよう、なるたけふんわりと投げる必要がある。ところがこのYさんが投げるボールの軌跡はほぼ直線であり、ゴールポストには当たらずそのゴールが掛けられている壁に当たっていた。むしろその壁を狙って投げているようであり、これではただの遠投である。一体どういうフォームで投げているのか、それの確認はとれなかったが、もはやフリースローとは言えないその挙動は俺の視界の外で何回か繰り返され、それが放つボールは全て激しい音を立てて壁にぶち当てられていた。

 

 そういえば中学生の時分俺はバスケットボール部に所属していた。これははっきりと言えることだが、俺はバスケットには興味がない。というよりも、そのバスケットの一つ上位の概念であるスポーツというものに興味・関心が、全くと言っていいほどない。自分がするのもそうだし他人がやっているのを見るのもそうだ。俺は体を動かすという行為そのものに憎悪を抱いており、可能であるならばずっと寝ていたい人間なのだ。そういう怠慢癖のある自分が何故あの常にボールを床にバウンドさせていなければならないという理不尽極まりないルールがあるスポーツをやっていたかと言えば、当時バスケットボールを題材にした漫画が世間で大ウケしていたからである。それに俺は感化され、これをやるのがイケてる、と思って始めたのであった。

 フリースローで思い出したことがある。バスケットでシュートを打つ時のフォームというのは男女によって違いがある。右利きの場合で話を進めるが、男性の場合右腕は脇をしめるようにして顔の前に持って行き、額の斜め上前方で掌を反らし、ボールを乗せる。左手はその右手に乗せられたボールが落ちないよう、左側から支える。そして右手のスナップを充分に効かせ、打つ。左手は支えるだけで何も力は入れない。つまり力が入るのは片方の腕だけということである。

 これが女子になると両方の腕を均等、左右対称に使う。両手でボールを支え、両方の手首を花が開くように外側に返して打つのである。何故そういう違いがあるのかは分からないが、おそらく腕力の関係だろうと思う。単純に両手を使った方がボールは遠くまで飛ばせる。

 俺は実際に部活動をしていたころは3ポイントシュートをよく打った。バスケットが行われるコートには様々なラインが引かれていて、特にゴール周辺はそれが錯綜している。その入り組んだ線の中の一番外側のものは、ゴールを中心点とした半円のように引かれている。その半円の中でのシュートは2ポイントの価値なのだが、半円外からシュートを決めると3ポイントが与えられるのだ。何故俺が3ポイントシュートをよく打っていたのか、そのいきさつは全く思い出せない。覚えているのは、俺は2ポイントシュートを打つときは男性のシュートのフォーム、3ポイントシュートを打つときは女性のシュートのフォームをとっていた、ということだ。だってゴールに届かないんだもの。貧弱だったからね、俺は。今でもそうだが。

 男性にもかかわらず女性のフォームをとっていることに対しては、あまり羞恥心はなかった。全くなかった、と言えば嘘になるかもしれないが、この記憶に関しては嫌なしこりのようなものはないからあまり気にしてなかったように思う。茶化すような人も周りにいなかったし。自分の物理的な貧弱性も気にしてはいなかった。むしろスリムでイケてると思ってたと思う。

 

 先にも書いたとおり俺は体を動かすことが嫌いだから、バスケット自体にはあまりいい思い出はないし、今の自分の糧になっているかと言えばそうでもない。ただその部活動でできた友達と一緒に遊んだのは楽しかったかな。

 余暇は仲間と共にスポーツをして楽しみストレスを発散、というエネルギッシュなライフスタイルは俺には信じられない。別にそういう人がいてももちろんいいのだが、俺は休日は寝ていたいよ。

 ちなみに俺が世間に大ウケしていたバスケットの漫画をちゃんと読んだのは成人した後だった。

 

 

 

 高校に進学した後もバスケットボール部に入部したのだが、中学の時のそれよりも練習がきつく、皆についていけなくなって、辞めた。そこから段々学校に行くこと自体が嫌になってきて、朝学校に行くと見せかけて学校外で適当に時間をつぶし、親が仕事でいなくなったのを見計らって家に戻ってきて、こたつの中に入り込み仰向けになっていた。その時の自分の気持ちは思い出せない。